ドイツと日本の介護保険制度~介護の社会化が進んだのはどっち?~

8月7日、衆議院第一議員会館で開催されたドイツの介護保険制度についての学習会に参加しました。

ドイツの公的介護保険は、日本の介護保険の手本となった制度です。

介護保障を独立した社会保険制度によって行っており、制度上の共通点も多い一方でこの数年間で方向性が違ってきたこともわかりました。

ドイツでは日本よりも一足早く、 1994年に介護保険法が成立しました。
1990年には、ドイツでは人口の 15%が65歳以上という高齢化が進んだ国であり、すでに十分な長期ケアの制度をもっていました。
制度の財源は100%保険料で賄われ、負担は赤ちゃんから高齢者にまで及びます。日本のように自治体ごとに保険料が設定されるのではなく、法律で規定され連邦全域で一律となっているとのことでした。

在宅介護が優先され、介護者も家族だけにとどまらず親戚、隣人と多様で、介護者に報いるために在宅介護における現金給付があります。介護者は、そのお金で独自にヘルパーを雇う現物給付等を使うこともできますが、7割以上の介護者は現金給付を選択しています。

日本の介護保険制度では、女性の解放という意味もあったため、介護家族に現金給付を行えば、結局、女性が介護労働に従事させられることになると現金給付が否定された背景があります。そのため介護保険は公的サービスの提供のみとなりました。

私は、公的サービスを否定するものではありません。隣人とはいえ、「家」に介護ヘルパーではない他人が入ってくることに抵抗があるのが日本人です。
ドイツでは、介護で疲弊した家族による虐待事例は年間どのくらいあるのか、質問しましたが、納得のいく回答は得られませんでした。
もちろん、ドイツにも介護施設はありますが、NPOやキリスト教団体が運営し、日本のように社会福祉法人や民間企業が運営する福祉施設ほどの数や規模はないとのことでした。

また、日本では、介護要支援1~2、要介護1~5の7段階と細分化され、ドイツでは要介護度1~3の3段階。別途、認知症対応、重篤事例対応等がありますが要介護1でも日本でいう要介護3以上とかなり介護度が高くなってから制度につながる印象を受けました。その後、2015年から17年にかけては介護段階を5段階に増やし、「介護保険強化法」を定めて抜本改革に取り組みます。その目玉の一つが、軽度者支援の強化でした。

ドイツでは2001年には費用負担を減らす目的で介護専門職でない無資格者(研修義務あり)によるサービス提供を認めています。これは、日本でいうと介護保険制度の改正により2017年4月から要支援者を対象とする総合事業介護予防・日常生活支援総合事業のモデルとなったのではないでしょうか。

どちらが介護の社会化が進んだかというと簡単には比較できませんが、介護の社会化のための制度であるなら、介護が必要になったときに必要なサービスが届く制度でなければなりません。